【完】俺が消えてしまう前に
七海は本を軽く閉じ、俺の方を見てこう言った。
「今思えば、私が樹君と愛希ちゃんに話しかけてるの皆には見えてないからさ。そりゃあひそひそ話されるよね」
七海の言葉に俺は納得した。
最初に出会った時、確かにそうだったから。
それに俺が高校生たちに話しかけた時もスルーされまくった。
あれは・・・
俺の姿が見えてなかったからだ。
・・・こうすれば全て辻褄があう。
嫌なんだけど。
七海は軽く閉じた本をもう一度開き、
中身を読み始めた。
「えーっと。幽霊にはたくさんの種類がある。自殺霊、思い出霊、執着霊、生霊・・・」
「うっわ、本当にたくさんあるな」
「樹君はこの中だったら一体どの霊なんだろう」
「分かんないな・・・。記憶が少しでも戻れば分かるんだろうけど」
「うん。少しでも戻ってくれれば樹君が何者なのかもきっと分かる手掛かりになるだろうし・・・。こんな所で本読んでてもしょうがないのかな?」
「でも当てずっぽうに行くってのもどうかと思うけど」
「だよねぇ・・・」
七海は頭を抱えた。
俺も真剣に考える。
だけど何もいい考えなんて浮かんでこなかった。