【完】俺が消えてしまう前に
「はぁ・・・はぁ・・・」
図書館から出てからもなるべく離れたところまで走りきった俺達。
運動が苦手なのか、
女の子だからなのか分からないけど
七海は肩で息をしていた。
俺は一つも息を切らしていない。
男だから、なんて事じゃないと思う。
これは生身の体じゃないからだ。
どれだけ走っても歩いても、
俺の体が疲れる事はない。
愛希だってそうだった。
小さい子供なのに眠くもならないし、疲れもしないなんておかしい。
それは幽霊だから。
その言葉だけで納得がいく。
「・・・羨ましいな。息も上がらない体」
「ばーか。俺は七海が羨ましいよ」
「あはは、ごめん」
少したっても七海の息は上がったままだ。
俺がおかしいと感じた時にはもう遅かった。
七海はその場に倒れ込み、うずくまった。
「おい!?七海!!どうしたんだよ七海!」
俺の腕から愛希が飛び降り、七海に近寄る。
「なっちゃん!!」
俺は急いで七海をお姫様抱っこの状態で抱き上げようとした。
何度も、何度も。
でも駄目だった。
俺の手は七海の体をすり抜ける。
「・・・くそっ」
俺は地面に自分の手を叩きつけた。
もちろん痛みはない。