【完】俺が消えてしまう前に


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「ったくよ、なんで俺がコンビニなんかに・・・」


「文句言わないのー。樹だっていっつも友達に頼んでるでしょ?」


「そりゃ当然だろ?俺の言う事聞かなきゃ痛い目にあうんだからさ」


「もう、本当止めなさい」


「うるせぇ」


「言葉づかいも悪いし・・・樹のお母さんたちに顔向けできないなぁ」


「しなくていいし。っつーかさ、俺今年の墓参りいかねぇから」



墓参り・・・?
俺の両親はもう死んでるのか?


「何言ってるの!?毎年行ってたじゃん!」


「そろそろ親離れも必要だろ?」


「樹!!!」



音が聞こえる。
大きな悲鳴と車のブレーキ音。



「あ・・・危ない!!」


一瞬だった。
俺の隣にいた"彼女"は音の聞こえる交差点に一直線に走って行った。


俺は追いつけなかった。

『行くな!』

その言葉が出てこなかった。




「キャーーーーーーッ!」



周りにいた奴らの悲鳴。
ガソリンの漏れたにおい。
血生臭い"彼女"。


そして小さな女の子。



「う、うわああああああああああ」

全てが終わる音がした。


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