【完】俺が消えてしまう前に
その女の人のお友達か弟なのか。
近くにいた高校生の男の子は大きな叫びをあげたらしいわ。
「う、うわああああああああああ」
まるで世界が終わっていくような叫びだったそうよ。
私は聞いた事ないんだけど。
それから愛希ちゃんと女の人は救急車で運ばれた。
もちろんトラックの運転手も。
トラックの運転手は軽傷ですんだわ。
愛希ちゃんも重傷だったけれど一命は取り留めたの。
だけど、
女の人は救急車の中で息をひきとったらしいわ。
愛希ちゃんは長い間入院をしていたの。
その間ずっとご両親は涙を流しながら女の人の唯一の親族である高校生の男の子に何度も何度も謝ったらしいの。
でも、彼は許してくれなかった。
「お前らのせいだ・・・お前らのせいだ・・・お前らのせいで・・・!!!!」
その子はとても短気で
いつも愛希ちゃんのお父さんに殴りかかっては泣いていたらしいわ。
愛希ちゃんのお父さんも泣きながらそれを受け止めていた。
この痛みなんてこれっぽっちも痛くない。
痛いのは彼の心の方なんだ。
そして死んでしまった彼女の痛みの方が強い。
そう言って、ね。