【完】俺が消えてしまう前に
そんなご両親に彼もだんだんと心を開いて行った。
愛希ちゃんも目を覚まして、
家族で彼と接するようになった。
ようやく彼の名前を知ったご両親と愛希ちゃん。
「俺は・・・木戸、樹って言います」
「じゃあいっちゃんだね!」
「い、いっちゃん!?」
「いっちゃん♪」
「愛希はお兄ちゃんが出来たみたいで嬉しいんだな」
「良かったわね、愛希」
もちろん家族同様にご両親も樹君に接したそうよ。
「樹、と呼んでもいいかな」
「えっ」
「私たちの事本当のお父さんとお母さんと思ってもいいからね?」
「いや、でも・・・」
「償いだとも思っているが、それ以上に君を一人にできない。それに、もうこんなにも家族じゃないか」
「お、俺・・・」
「ずうずうしいかもしれないわ。貴方の大切な人を奪ってしまったような私たちだもの。断ってくれても構わない。・・・もしよかったら一緒に住まない?」
樹君は愛希ちゃんの家族になった。
戸籍上はまだ違ったけれど、本当の親子だった。
近所の私たちもとても微笑ましかったわ。
樹君も笑顔が増えてきて、
最初はなんて不良でチャラいのかと思っていたけど。
だんだんと落ち着いてきて
とても心遣いのできるいい子に育っていった。