【完】俺が消えてしまう前に
第3章

・戻りつつある記憶



**


俺達はその後情報交換を桃子とした。

全く同じような事を桃子も話されたらしい。



愛希は俺の事を「お兄ちゃん!」と言って喜んでいた。


今思うと、愛希は俺との記憶だけなくなっていたらしい。

・・・不思議な話だ。



「つまり、ここに二人が成仏できるキーワードが隠されているのよ」


急に桃子が強く言う。
俺と七海ははっとして桃子を見た。


「どうして愛希さんは樹さんだけの事を忘れてしまっていたのか。樹さんは全ての記憶を失くしてしまったのか。きっとお互い何かの未練を残してるはずよ」


「俺はまだ完璧に記憶が戻ったわけじゃないから・・・」


「じゃあ愛希さん、貴女は樹さんの事をちゃんと思いだした?」


「おもいだしたよ?」



けろっとして言う愛希。
俺は拍子抜けしてしまった。




「いっちゃんはあきのお兄ちゃん!だいじなかぞく!」


「・・・愛希」


「どうしてわすれてたんだろう。ごめんね?いっちゃん」



愛希はそう言って俺に飛びついてきた。
ぎゅうっと抱きしめる小さな体。

ほんのり温かい。



「俺も、ごめんな?まだちゃんと思い出せてない」


「いいの。あきがおぼえてればいいの」


「・・・」


「あき、おもいだしたんだ。ずっとずっとあの公園にいたりゆう」



愛希がこの世に残ってしまっている理由。
それは俺にあった。
< 75 / 166 >

この作品をシェア

pagetop