【完】俺が消えてしまう前に
第3章
・戻りつつある記憶
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俺達はその後情報交換を桃子とした。
全く同じような事を桃子も話されたらしい。
愛希は俺の事を「お兄ちゃん!」と言って喜んでいた。
今思うと、愛希は俺との記憶だけなくなっていたらしい。
・・・不思議な話だ。
「つまり、ここに二人が成仏できるキーワードが隠されているのよ」
急に桃子が強く言う。
俺と七海ははっとして桃子を見た。
「どうして愛希さんは樹さんだけの事を忘れてしまっていたのか。樹さんは全ての記憶を失くしてしまったのか。きっとお互い何かの未練を残してるはずよ」
「俺はまだ完璧に記憶が戻ったわけじゃないから・・・」
「じゃあ愛希さん、貴女は樹さんの事をちゃんと思いだした?」
「おもいだしたよ?」
けろっとして言う愛希。
俺は拍子抜けしてしまった。
「いっちゃんはあきのお兄ちゃん!だいじなかぞく!」
「・・・愛希」
「どうしてわすれてたんだろう。ごめんね?いっちゃん」
愛希はそう言って俺に飛びついてきた。
ぎゅうっと抱きしめる小さな体。
ほんのり温かい。
「俺も、ごめんな?まだちゃんと思い出せてない」
「いいの。あきがおぼえてればいいの」
「・・・」
「あき、おもいだしたんだ。ずっとずっとあの公園にいたりゆう」
愛希がこの世に残ってしまっている理由。
それは俺にあった。