【完】俺が消えてしまう前に
愛希は今日桃子の家に泊まるそうだ。
って言っても寝る事はしないんだろうけど。
実はいつも七海の家に居候していた俺達。
愛希がいない今日は会話が少し少ない気がする。
七海の家までの帰り道の事。
「なーんか静かだね」
「そう、だな」
「樹君なんか喋ってよ」
「そんなの俺に言うなよ」
「・・・」
「・・・」
俺は俺で、
七海が記憶の中の"彼女"に似ているから話しにくい。
俺よりも先に死んでしまった人。
見た目も似ているけど中身も似ていると思う。
七海も七海で何か俺と話しにくい理由でもあるんだろうな。
「あのさ」
「・・・ん?」
「樹君、もうすぐ成仏しちゃうんだよね」
「・・・あー」
「だよね?」
「俺の記憶が戻り次第ってところじゃないかな」
「あっうんそうだよね」
少し笑顔が出る七海。
「俺は成仏しない方がいいってか?」
「ち、違うよ!」
「じゃあ成仏してほしい?」
「そ、それも違う!」
「なんなんだよ」