【完】俺が消えてしまう前に
七星は俺にとって親でもあり、
親友でもあり、
姉でもあった。
恋愛感情なんて微塵も持っていなかった、とは言えない。
とにかく大事な人だった。
両親が死んでからは
俺の傍にいて支えてくれる人が七星しかいなかったから。
気の合う親友だっていた。
悪仲間だったけど。
でも、それじゃあ満たされない部分もあった。
それを埋めてくれたのが七星。
そんな七星を失った俺。
狂いそうだった事を思い出した。
本気の本気で。
愛希達を殺そうとまで思った。
自分の手で。
「樹君に嫌われてもしょうがないよね」
「嫌うって・・・」
「しょうがない。醜いもん。たとえいじめがなくなっても性格とかが変わるわけじゃない。樹君がいなくなっちゃったらきっと元の私にも戻る」
「俺の話を」
「どうして、私ってこんなんなんだろうね」
「七海!聞け」
「・・・何?」
こんな風に思い出して、
今七海と接して思う事。
「俺は」
記憶を失って、途方に迷って
誰にも気づいてもらえなくて
そんな俺に声をかけてくれた君。
「七海の事」
初めて会ったときから────。
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