【完】俺が消えてしまう前に
「そうだったんですか・・・。記憶が・・・」
信じてもらえないかと思ったが、
その子は真剣に俺の話を聞いてくれた。
「いやぁ、もう俺どうしたらいいか分かんなくて。こいつも家に届けてやりたいのに力にもなれず・・・」
隣にいた愛希の頭にぽんと手を置く。
「私でよければ力になりますよ」
「え、いいの?」
「私から話しかけた身ですし、そんな事聞いたらほっとけません!」
「助かるよ」
「あ、お名前を聞いてもいいですか?」
「俺の名前?木戸樹」
「樹・・・さんですね」
「あーもういいよ。堅苦しいの嫌いだし。敬語もさんもいらない」
「えっ・・・で、でも!初対面の人に・・・」
「これから世話になるんだからさ、いいじゃん」
「じゃ、じゃあ遠慮なく・・・!」
「おう。で、君の名前は?」
「私は水の島の七つの海って書いて水島七海」
「へぇ、いい名前じゃん」
「私の事も呼び捨てにしていいからね!」
「おう」
七海はしゃがみこみ、ベンチに座っている愛希と目を合わせた。
「貴女は愛希ちゃんって言うんだよね?」
愛希は笑顔で頷いた。
「ふふ、可愛い」
「お姉ちゃんはななみちゃんって言うの?」
「うん。そうだよ」
「なっちゃんって呼んでいい?」
「友達にもそう呼ばれてるし、大歓迎だよ」