【完】俺が消えてしまう前に
「君・・・!」
七海の方を見て父さんは叫びかけた。
だけどそんな父さんを母さんは止める。
「貴方、やめて」
「・・・だけど」
「お話聞きましょ」
「・・・一体、何の用なんですか」
父さんも向かい側のソファに座り、母さんも座った。
「では、単刀直入に今度こそ言わせていただきます」
「くだらない事だったら即帰ってもらうからな」
「・・・貴方」
「・・・いいから」
少しだけ黙り込んだ桃子。
だけどすぐにこう切り出した。
「私には霊が見えます」
「・・・はい?」
「きっと私の母をテレビでよく見るはずですわ」
桃子は鞄の中からある名刺を取りだした。
「桜塚聖子-サクラヅカセイコ-。これは・・・」
「ええ、霊媒師という肩書ですが。霊の事に関しては予約がいっぱいです」
まだ俺も知らない桃子の家庭や素顔。
代々霊を清める家だとは聞いていたけど、
母親の事までは知らなかった。
俺が生きていた頃も確かにテレビでたくさん見た気がする。