【完】俺が消えてしまう前に
「だけど君はその子供さんなんだろ。桜塚聖子本人じゃないんだから俺は信用しない」
「信用してくださらなくても結構です。証明しますので」
桃子はこっちを見ながら
「ここに愛希さんと樹さんがいますわ」
そう言った。
父さんと母さんははっとする。
きっと愛希の事じゃない、俺の事だろう。
赤の他人の桃子が知るはずもない内容。
「何か言いたい事はあるかしら?」
桃子は俺達にそう言った。
「待って、本当にいるのね?」
母さんの言葉に父さんは驚く。
「おい」
「貴方は少し黙ってて」
「・・・」
「本当にいるのね?」
「いますわ」
「どこにいるの?」
桃子は俺達の方に手を差し出した。
「ここに愛希さん。ここに樹さんですわ」
信じられない話。
だけど信じられる話。
俺達は確かにここにいて
確かにここにいない。