てのひらを、ぎゅっと。


私はすーっと大きく息を吸うと、
───ガラッと勢いよくドアを開けた。


一斉に私の方に向く視線。


一瞬、間を置いて…………


「心優ー!おはよ!」

「大丈夫かー?」

「待ってたよー」


みんなが口々に声をかけてきてくれた。


その瞬間、なぜか胸が温かくなってじんとした。


「…………心優、おはよ」


すぐさま梨帆が、あいさつをしながら心配そうに駆け寄ってきてくれる。


そして小声で、


“大丈夫?”


と耳打ちされた。


だから私はピースサインを作って梨帆に向けた。


……あれ?


私は梨帆をじっと見て気づく。


梨帆………目が腫れてる……?


梨帆はそんな私に気づいたのか、目尻を隠して、


「泣いてなんかないからね!」


とおどけた。


やっぱり泣いたんだ…………。


梨帆、ごめん。ごめんね。


自分の席へ向かう途中、心配そうな顔をしたこうちゃんと目が合ったけど、私は微笑んだだけですぐに目を背けた。


そんな私をおかしいと感じたのか、その授業中はずっとこうちゃんの視線を感じていた。


< 131 / 465 >

この作品をシェア

pagetop