てのひらを、ぎゅっと。
限られた時間
悲劇は突然にやってきた。
それは私の余命残り1ヶ月を過ぎて少したった頃。
6月11日。
あと1ヶ月、生きていられるかも分からない。
あれから変わらず、梨帆は病室にほぼ毎日のように顔を出してくれる。
今では、梨帆の前で弱音を吐いてしまうことが多々ある。
“迷惑じゃない?”
いつかの日にそう聞いてみたら、本気で叱られた。
”何言ってんの?それは親友である私の特権でしょ?”
って、当たり前のように梨帆はさらっと言ってのけた。
その梨帆の目には見えない何気ない優しさに、何度救われたことだろう。
本当に私にとって梨帆は、何よりの安定剤だと思う。
けれど………そんな普通の毎日を崩してしまう出来事が、何の前触れもなく起こるなんて。
いや、前触れならあった。
梨帆が言ってたから。