てのひらを、ぎゅっと。

名前に込めた想い




「心優!」


朝早くに、ガラッという大きな音をたてて私の病室に飛び込んできたのはお父さん。


病室では静かにしなくちゃいけないのに。


他の患者さんに迷惑じゃんか。


でもそんなに慌てて、どうしたのだろう。


マイペースにそんなことを考えていた私の耳に入ってきた言葉は、信じられない事実だった。


「優子が……母さんが……、倒れた……」


…………え?


お、お母さんが、倒れた?


う、そ………。


急いで体を起こそうとするけど、手足が痺れて全然力が入らない。


頭の中が真っ白で、お母さんの笑顔が脳裏に浮かんだ。


「大、丈夫………なの?」


仕方なく寝転んだまま、震える声を懸命に絞り出してお父さんに問いかける。


今日は確か……何日だっけ?


病室に掛けてあるカレンダーに目をやると今日の日付は、7月9日。


赤ちゃんが生まれる予定日は、7月26日だから………。


嘘……2週間も早い……。


< 228 / 465 >

この作品をシェア

pagetop