てのひらを、ぎゅっと。
「心優!?」
何かが私を強くさせた。
見えない何かが、私に力をくれた。
不思議と体に力が戻ってきて、私はベットから起き上がる。
手足の痺れも収まり、足の感覚も戻ってきた。
3週間ぶりに見渡した病室は、なんだかとても懐かしかった。
「私も行く……」
「無理だろ!?ダメだ!お前はお前の体を大切に………」
「してるよ?大切にしてる。今、私も自分と必死に戦ってる。でも………今、私以上に頑張ってるのは、お母さんと赤ちゃんなんだよ?」
分かるんだ。
自分と戦うことが、どれだけつらく苦しいことなのか。
十分頑張ってるのに、”頑張れ“ってまた言われることが、どれだけ切なくて儚いものなのか。
私だって、毎日頑張って生きてる。
けど………それ以上の苦しみに耐え、頑張ってる人がいる。
私は何とか先生に許しをもらって、お父さんと一緒に、お母さんが手術を受けてる病棟へ向かった。
もちろんまだ上手く力が入らなくて歩くことはできないから、車椅子を借りた。
腕には点滴。
何かあったら、周りの先生にすぐ言うように、って念を押された。