てのひらを、ぎゅっと。
そう。
いつも車椅子に乗るときは、お父さんや先生、看護師さんが手伝ってくれる。
一人だと床に転げ落ちちゃったりして、
上手く乗れないの。
私の言った意味にようやく気づいたこうちゃんは、途端に顔をニヤニヤさせる。
「…………なに」
私は口を尖らせて、ぶっきらぼうに言い放つ。
だって、こうちゃん………絶対変なこと考えてるでしょ。
「俺の姫、お姫様抱っこしましょうか?」
………ほらね。
かっこいい顔が完全に崩壊してるよ…。
顔がにやけてて、これじゃ本当の変態じゃん。
ってか私、そもそもこうちゃんの姫になった覚えないし!
「……………いい。しなくて」
「ひーめ?本当にー?乗せてあげなくていいのかなー?」
…………ズルい。
こうちゃんはズルいよ。
私が一人で車椅子に乗れないのを良いことに、からかってくる。