てのひらを、ぎゅっと。
自分でも、すごく単純だと思う。
あの人の名前を聞いただけで、こんなにも胸が温かくて、嬉しくなるんだもん。
一秒でも早く会いたいんだ。
もう私の心は重症だよ。
キミ色に染まっちゃったんだ。
「お母さん、行ってきます!」
「はいはい。行ってらっしゃい」
お母さんの声を背に、私は玄関まで猛ダッシュ。
歩いてる時間がもったいない!
そしてその勢いのまま玄関へ行くと、靴を乱暴に履き、扉を開いた。
「玲央、おはよ!」
私は今日最初のとびきりの笑顔を彼に向けた。
腰の少し上まであるストレートの黒髪が、春風に乗ってふわりとなびく。
そんな笑顔の私に答えるように………
「お、紫苑。はよっ!」
彼も私にとびきりの笑顔を向けてくれた。
ドキッ………。
私は今日もこうやって、彼に魔法をかけられたみたいに動けなくなるんだ。