てのひらを、ぎゅっと。


「なっ、また叩いたな!あー、俺の肩が痛いって泣いてる~」


ふざけながら大袈裟に痛がるふりをする玲央を横目に、私はドキドキを抑えるのに精一杯だった。


だって、玲央と同じクラスだよ?


嬉しすぎるよ………。


「ん?紫苑?なんかにやけてるぞー?」

「………っ、うるさい!」


私は今日一日中、舞い上がる心を必死に抑えて過ごした。


正直ほんの少しだけ、玲央の彼女になれたら、って考えることもある。


好きだから。


好きな人の彼女になりたい、って思うの、普通のことでしょ?


でも、私に幼なじみの壁を壊すことはやっぱりできなくて。


今日も、新学期が始まったばかりなのによく女の子に呼び出されていた玲央を見ながら、私はひとつ溜め息をついた。


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