てのひらを、ぎゅっと。


声が震えた。自分でも驚くくらいに。


「違うわ……。心優は、病気なんかじゃないわ……」


もっと………私以上に、お母さんの声が震えた。


………嘘だ。絶対、嘘。


お母さん、嘘つくの下手だよ。


そんなに切なそうに笑わないでよ。


悲しそうに瞳を揺らさないでよ。


「本当のこと、教えてよ。私は大丈夫だからさ。私なら、絶対乗り越えて見せるから……」


“乗り越えて見せる”


この言葉に迷いはなかった。


どんなに辛い治療でも耐えてやる。


過酷な運命でも立ち向かってやる。


だってその先に、こうちゃんがいるから。


だから大丈夫。


「違う………違うのよ………っ」

「………なにが……違うの?」


頑張ると決心したのにお母さんはひたすら涙を流しながら“違う”を繰り返していた。


…………私は、甘かった。


自分の運命を甘く見ていた。


まだ15歳の私は、病気の怖さを知らなかった。





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