てのひらを、ぎゅっと。


それから間もなくして心優が亡くなって、どん底の世界に俺一人だけ突き落とされたようで。


最愛の人を亡くした傷は、思っていたよりも深かった。


俺は我を無くしたように泣いた。


毎日、毎日、気が狂うほどに泣き叫び、
何度も何度も自分を責めた。


どうしてもっと早く、心優の苦しみに気づいてあげられなかったんだろう。


どうしてもっと早く、心優に会いに行ってあげられなかったんだろう。


”どうして?“が頭の中をぐるぐると駆け巡る。


もっと、ふたりでいろんなところに行けばよかった。


もっと、たくさんの景色を見せてあげたかった。


もっと、ふたりで手を繋げばよかった。


もっと、ふたりでキスをしたかった。


もっと………もっと、もっともっと。


心優を強く抱きしめて、素直に気持ちを伝えてあげればよかった。


たくさんの“もっと”が、俺を苦しめる。


でも、何度泣いても、心優が俺の隣に戻ってくることはなかった。


あの日から、”後悔“という二文字と行き場を失った哀しみがつねに頭を支配するようになった。


………そんな俺を、希衣は無償の愛で救ってくれた。


闇から助けだしてくれた。


見返りも求めず、弱音も吐かず。


”私は光希くんと一緒にいることができたらそれだけで十分幸せなの“


そう言ってただ笑ってくれた。


笑えない俺の隣で、希衣はいつも明るく笑ってくれてたんだ。


俺は今でも思うよ。


きっと希衣がいなければ、俺はダメになってた。


心優との約束も、叶えることができなかった。


< 410 / 465 >

この作品をシェア

pagetop