てのひらを、ぎゅっと。


「ねぇ、お母さん………」


時刻はもう11時をまわっていた。


お母さんは家へ帰ってきてからずっとずっと泣いている。


リビングの机に一人突っ伏して。


お母さんをこんなに泣かせているのが私だと思うと、すごく胸が苦しくて痛い。


「そんなに泣いてたら、赤ちゃんも悲しんじゃうぞ?」


少しおどけて言ってみたけど、お母さんはしくしくと肩を震わせ泣いてるまま。


いつもは大きいお母さんの背中が、やけに小さく見えた。


私はそっとお母さんのお腹に触れる。


「この子が生まれるのは3ヶ月後か。私が死ぬのも3ヶ月後。私、妹に会えるかな?」


お母さん、私ね?まだ実感ないんだ。


そりゃそうだよね。


今日の今日で、自分が死ぬなんて理解できる人いないよね。




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