てのひらを、ぎゅっと。
私の腰まである黒髪が、ふわっと風に浮いた。
いつか君が好きだと言ってくれた私の髪の毛。
長くて真っ黒なストレートの髪の毛。
よかった。
抜けなくて、なくならなくて。
だって抗がん剤を使ったら、髪の毛、抜けちゃうでしょ?
せめて最後まで、君の好きだった私でいたいから。
自分の命のタイムリミットを知って、好きなのに別れを告げなくてはならないことがあることを始めて知った。
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