てのひらを、ぎゅっと。


─────チャプン。


「あははっ。本当に、お父さんと入るのいつぶりだろ」


今、私は浴槽に浸かっている。


緑色の錠剤をお風呂のお湯に落とすと、
その錠剤がシュワシュワっと泡立って溶けてきた。


少しすると、お風呂場の中にアロマのいい香りが広がっていった。


どことなく落ちついていて、リラックスできる私の大好きな匂い。


お父さんは外で体を洗っている。


なんか私に背中を向けてるけど、恥ずかしいのかな?


「ね、私の話しちゃんと聞いてる?一緒にお風呂入るの、いつぶりだっけ?」

「あ、ごめんごめん。そうだな。もう、
心優が小4の時くらいから入ってないんじゃないのか?」

「そっか……」


もうそんなに入っていないんだ。


時間って、私たちが考えてる以上にあっという間に過ぎていっちゃうよね。


「なぁ………心優」

「………ん?」


狭いお風呂場のなかに、私とお父さんの声がいつもより大きく響く。


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