てのひらを、ぎゅっと。


……よかった。


こうちゃんが、笑ってる。


………今なら言える気がした。


なんの偽りもなく、心からの笑顔で。


「おめでとう」


私はふわりと笑った。


窓から入ってきた風が私の髪を揺らす。


私の笑顔のように、ふわりと浮かんだ。


「せんきゅ」


そう言い残して、こうちゃんは私の横を通り過ぎた。


今までで一番の最高の笑顔を見せて。


私は泣きたい気持ちを必死に抑えながら、後ろを振り返る。


そこには、愛しい人の背中があった。


私、もう泣かない。


強くなる。


こうちゃんを想って流す涙は今日で最後。


だんだんとぼやけていく大好きな人の姿を見ながら思った。


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