魅惑のハニーリップ
 嫌いではないけど、興味とかそういうものだけで、仕事になんてできるのだろうか?
 決してそんな甘いものではないと思うのだけれど……

「いろいろ力になってよ。お願い!!」

 千秋が両手を顔の前で合わせながら、私の返事をじっと伺う。
 けど、結局この日すぐに結論なんて出せるわけもなくて、千秋とはそのまま別れて帰ってきた。

 千秋の働いてるお店に行ったことは何度もある。
 私好みのアクセサリーや雑貨がたくさん置いてあるお洒落なお店だ。

 そういう場所で働くのは嫌じゃない。
 嫌じゃないけど、千秋と一緒に働くってことは……

 もちろん今の会社では働けない。
 辞めなきゃいけなくなるということだ。

 今の会社に就職して、一年と少し。
 転職なんて考えたことはなかったけれど……

 降ってわいた転職話に、どうしたらいいかわからない。




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