魅惑のハニーリップ
「なぁに? 悩み事でもあるの? ……まさか、聖二が原因とか? 忙しいからあんまりデートできないもんね」

「あ、いえ……宇田さん、会いに来てくれるんですよ。ほぼ毎日のように、うちに寄ってくれるんです」

 言ってから恥ずかしくなってしまって、自分の頬が熱くなるのを感じた。
 だって、そんなのろけるような言葉を……

「ちょっと遥、そんなの聞いてないんだけどぉー?」

「んふふ。聖二もやるわね~。遥ちゃんのこと、毎日会いに行きたいくらい好きなのね」

 優子も佐那子さんも口々に突っ込みを入れてくるから、どちらから対処したらいいかわからない。

「仕事で疲れてるのに……申し訳ないなって思うんですけどね」

「そんなの気にしないの! 聖二が会いに行きたいから勝手に行ってるんだし」

 佐那子さんは、さも何でもなさそうに首を小刻みに横に振る。
 私が気にすることじゃない、と。

「心配させないでよ。うまくいってるんじゃない。聖二に説教しなきゃいけないのかって思っちゃったわ」

 冗談っぽくそう言いながら、佐那子さんは私の腕を肘でつつくから、私もハニかみながらブンブンと首を横に振った。

 佐那子さんは宇田さんに本当に説教しそうだもの。

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