魅惑のハニーリップ
 週が明けた金曜日。
 会社に出勤すると、一階のエレベーターの前で佐那子さんとバッタリ出くわした。

「さ、佐那子さん!!」

「あ、遥ちゃん、おはよ。」

「おはようじゃないですよ! いいんですか? 今日、仕事なんてしてて!」

 私が驚いてそう言うのも無理はない。
 だって佐那子さん、明日は……

「なんで?」

「なんでって! 明日は佐那子さんの結婚式じゃないですか!」

 そう。明日はついに、佐那子さんの結婚式の日だ。

 といっても、他の人と同じ普通の結婚式じゃない。
 社長のご子息と結婚するから、披露宴なんて政治家のパーティーなんじゃないかってほどの大人数だと聞いている。

 そんな日の前日に、普通に仕事してていいんだろうか。
< 137 / 166 >

この作品をシェア

pagetop