魅惑のハニーリップ
「昨日あれから遥ちゃんにメッセージ送ったんだけど、届いた?」

「あ、あの……すみませんでした。タクシーの中だったもので……」

「あはは。いいんだよ、気にしないで」

 思わず困った表情を浮かべると、私の絞り出した言葉を丁寧に遮るように、和久井さんは爽やかな笑みを見せる。

 こういう人はきっと、一般的に言えばモテるのだと思う。
 花形の営業部所属で、爽やかなイケメンなのだから。
 宇田さんも男らしくてカッコいいけれど、それとは違う種類のイケメンだ。
 などと、冷静に分析してしまった。

「あ、ごめん。俺、今日は朝イチで得意先に行かなきゃいけないんだ。あまり話してる時間がなくて……」

 和久井さんは左手にしている洒落た腕時計で時間を確認している。

「こちらこそすみません。急ぎますよね」

「今度、メシでも食いに行こうよ。また連絡するから!」

 そう言って、爽やかな笑顔で私に手を振りながら、和久井さんは足早に去って行った。

 悪い人ではなさそうだと思う。
 宇田さんが言ったように、すぐに取って食われる気は……今のところしないのだけれど。
 そんな風に思いながら、和久井さんの後姿を見送った。

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