魅惑のハニーリップ
 それなのになんとなく、今視界に入っている佐那子さんと宇田さんがお似合いに見えた。
 そのせいで自分でもわかるくらい、このとき笑顔が曇ってしまった。

「どうしたの? 元気ないじゃない」

 心配そうに、佐那子さんが私の顔を覗き込む。

「え? そうですかぁ?」

 なんとか笑みを取り戻してそう答えたとき、佐那子さんの後ろから宇田さんが現れた。

「遥ちゃん、おはよう」

「お、おはようございます」

 宇田さんと言葉を交わした瞬間、昨日のタクシーでの情景が一気に頭に浮かんで、急に恥ずかしくなった。

 だって、私の頭が宇田さんの肩に……
 まるで仲の良い恋人同士のようだったから。

「昨日、大丈夫だった? 二日酔いとかなってない?」

 視線を外してうつむき加減の私に、宇田さんがやさしく話しかける。

「大丈夫ですよ。二日酔いになるまで飲んでません」

 ダメだ。なんだか宇田さんの顔が見られない。
 それに、不自然なくらい、いつもより発する言葉が硬い。

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