魅惑のハニーリップ
「なに言ってるのよ。営業でいつも外にいるくせに。それにね、今日は女同士の話なの！」

　佐那子さんがおどけて、ねー？なんて私に同意を求める。
　思わずクスっと笑いながら、正直にコクリと頷いた。

「んじゃ、佐那子お姉さまに今回は任せますか」

　不意に宇田さんのほうに目をやると、ふんわりと微笑みながらも心配そうに私を見ていた。

　どうして宇田さんがそんな心配そうな顔をしているのかわからない。
　どんなに考えてみても、その答えは出そうになかった。


　お昼休みになって、佐那子さんと待ち合わせした１階ロビーへと降りる。

　彼女はまだ来ていなくて、ロビーの隅でボーッと立っていたら、次のエレベーターで佐那子さんも降りてきた。

「ごめんね遥ちゃん。待たせちゃった？」

「いえいえ。全然大丈夫です」

　ふたりで並んで会社を出る。
　佐那子さんと並ぶと、それだけでコンプレックスを感じてしまうほどだ。
　彼女は背もすらっとしてるし、細いし、足が長いから。まるでモデルさんみたいだ。
< 19 / 166 >
表紙・目次

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop