魅惑のハニーリップ
「あ、そうそう。今日、宇田さんが飲みに行こうって」

「ん? 宇田さん?」

「うん。営業部の男の子たちが一緒に飲みたいって言ってるらしいよ」


 宇田聖二(うだ せいじ)さんは入社十年目の先輩で、営業部ではいつもトップの成績を残しているエースだ。
 佐那子さんと同期で仲がいいのがきっかけで、たまに飲み会なんかにも私たちに声をかけてくれるようになった。

「だから遥、ガンガン食べて太ってる場合じゃないって! 恋のチャンスかもしれないのにぃー!」

「そんなこと言ったって、それ今日でしょ?  今さら遅いよ」

 恋のチャンス………私は逃しているのかな?
 前の恋をひきずってもいないし、恋をする気がないわけじゃないのだけれど。

 恋って、無理やりするものじゃない。

 その人を見ると急に胸がドキドキして……
 視線が外せなくなるのが、恋のはじまりだと思う。

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