魅惑のハニーリップ
「遥ちゃん、行くの?」

 心配そうな佐那子さんの瞳と視線が交錯した。

「行っちゃダメ……ですか?」

 思わず私も不安げな顔で問い返してしまう。

「ダメだとは言わないよ。でも、和久井くんは遥ちゃんを気に入ってるのはたしかね。紳士だからなにか無理強いしたりしないと思うけど、流されないように気をつけて? 遥ちゃんは魅力的な女の子なんだから」

「え?!……はい」

 必要以上に警戒するのは、相手に対して失礼だと思う。
 けど、佐那子さんの主張することも理解できる。

「デート、してみます。和久井さんと」

「そう?」

「はい。和久井さんのこと、まだ全然知りませんから。もしかしたらすごいいい人で、好きになっちゃうかもしれないじゃないですか」

 私がおどけてそんな風に言うと、佐那子さんは「そうね」と静かに笑っていた。

 私はまだなにも知らないから。――…和久井さんのことを
 好きになって、恋人になる人かもしれないよね……

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