ピンク☆ゴールド【短編】
私に合わせて、歩いてくれる錐生。


「ところで……今日は何処に行くの?」

「そうだなぁー。お嬢の服に合わせて、水族館なんてどう?」

「別に私は、何処でもいいよ?今日は、錐生の為のデートなんだし……。」


私の言葉を聞いて、ちょっと驚いたようだったけど、すぐにきゅっ…と口元を上げて錐生は、艶っぽく笑った。


「へぇ?お嬢、そんな風に考えてくれてたの?」

「え……うん。」

「そんな事、あんまり簡単に言わない方がいいよ?」

「…どういう意味……?」


私は錐生に尋ねたけど、錐生はただ何も言わず、真っ直ぐに私を見つめるだけだ。


「無防備…なんだよ、お嬢はさ。」

「無…防備?」

「気がついてないんだね。…………俺が教えてあげようか?」

「え……何を……」



チュッ



――――え?


頬に触れた、柔らかな感触。

そっと頬を撫でる。

触れられた部分は、少しだけ、熱を帯びていた。


「頬っぺただけじゃ、済まされないかもよ…?」


その瞬間、私の顔は、勢いよく真っ赤になっていって、同時に少しだけ、瞳が潤んでくる。


「そんな事……しないでよ…」


恥ずかしいのと悲しいので、私は錐生の顔が見れずに、俯く。

でも錐生は、そんな私を慰めるように、頭を撫でた。


「意味…解った?…あんな風に言ってくれるのも、嬉しいけどさ……俺も一応、男だよ?薫。」


『薫』と呼ばれた事に驚き、とっさに顔を上げる。

前にも言われた………。

どうして?何時もはお嬢って呼ぶのに………。


錐生が私を『薫』って呼ぶ時は、何かしら伝えたい事がある時なんだ――。



一体何が言いたいの……?





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