ピンク☆ゴールド【短編】
立ち止まって、きょとん…と驚いたような顔をする錐生。躊躇いがちに、何か言おうと口をもぞもぞ動かす。



「ねぇ…錐生、答えて。私と付き合ってるのはどうして?前は、たぶらかされたけど………。――理事長に頼まれたから?それとも…私の事、想ってくれてるからなの…?」



真剣な表情で錐生を見つめる。視線が絡み合い、重たい空気が流れる。


「はぁ……。」


溜まっていた息を一気に吐き出すように、溜息をつく。緩んでいた表情を急に険しくして、錐生は口を開いた。


「今のお嬢には言えない。」


この言葉で、私の頭にみるみる血が上った。


「どうして!?何で教えてくれないのっ?」

「……こんなにも、態度で示してるのに、どうして解んないの?」


冷たいナイフみたいな鋭い瞳。私の心にグサッと突き刺さる。


――でもそんな瞳とは裏腹に酷く悲しそうな瞳。今にも壊れてしまいそうで、私はこの時、本当に泣きそうになったんだよ。



「俺の気持ち……ちゃんと気付いてよ。もう限界なんだ。お嬢も………自分自身と、しっかり向き合ってほしい。そして、本当の気持ち…気付いて。そうじゃないと俺、このままお嬢の傍に居る事なんて、出来ねぇよ…。」





私はそれ以上、何も言えなくなってしまった。

錐生の気持ち………?

私の気持ち………?


錐生は一体、何を考えてるの?

私が鈍感なの知ってるくせに…

言葉で伝えてくれないと、解んないよ………。



胸の中でうごめく感情は、何時までも消える事がなくて、家に帰っても、一切何もする気になれない。


どうしよう。

このままじゃ、錐生が放れていってしまうような気がして、不安で堪らないの…。

行かないで…。



私の瞳には、うっすらと涙が浮かんでいて、気が付くと、私は深い眠りについていたんだ―。




< 18 / 34 >

この作品をシェア

pagetop