ピンク☆ゴールド【短編】
私はその男が居るであろう、理事長室へ、脚を止める事なく走っていった。


嘘でしょ?何でいきなり…。


ばんっ―――


「俊也!?」

「薫〜っ!!」


ギュッと抱きしめられ、頬にチュッとキスをされる。


「ちょっ…やめ…」

「俺、薫にスゲェ逢いたかった……。相変わらず、超可愛いんだけど…。」


きゅう…と私を抱きしめる力が強まる。


「ん〜〜っ…ちょっと!離してよ!」

「何でよ〜いいじゃん、ちょっとぐらい♪」


ん〜、と私の頭に顔をうずくめる俊也。


「ダメなモノはダメなの!」


そう言って、私は思いきり俊也の身体を押し退けた。私は普通の子より力が強いから、俊也はほんの少しだけよろけた。


「何でだよ〜…俺、超寂しかったんだぜ?アメリカなんかに行って、薫と放れちゃってさ〜、俺、マジ死ぬかと思った!だから久しぶりに逢えたんだし…少しは、可愛がらせてくれよ〜。」

「私はもうダメなのっ!他の相手探してよ!」

「無理。俺は薫じゃなきゃヤダ。」


こんなやり取りをしていると…



「何してんの?」


理事長室の前には、錐生と理事長が立っていた。


「こら、俊也君っ。ダメでしょう?薫は、ここに居る、錐生君の彼女なの。」

「えっ!?薫と…こいつが?」


俊也は私と錐生を交互に見る。明らかに驚いた顔。そして、ぱっと私の身体を離した。


「ごめんなさいね、錐生君。この子は南條 俊也君。薫の幼なじみなの。今までずっとアメリカに居たから、薫に逢えて、余程嬉しかったみたい。だから許してあげてね?」

「………はい。」


何時もより、一段と低い声。恐る恐る、錐生の顔を見る。

完全に不機嫌な表情。怒りのオーラが、全身から伝わってくる。


「ほら、俊也君は話があるのよ。後からお父様方もいらっしゃるみたいだし…。一度家に戻りましょう。薫はこのまま、学校に居なさい。私は俊也君と一緒に、家へ行くから。」

「はい…。」

「じゃあ後は任せたわ、錐生君。」


『じゃあね〜』と一言、俊也は言って、二人は理事長室から出て行った。


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