ピンク☆ゴールド【短編】
取り残された二人。錐生の機嫌があまりにも悪いので、私達の間には、重たい空気が流れていた。

耐え切れなくなって、私はゆっくりと口を開いた。


「あの…どうして……錐生は、ここに来たの?」


すると、錐生はキッと私を睨み付けるような瞳で見て、さっきよりも、きつい声色で続けた。


「理事長に…用があったんだよ。」


そうなんだ…と納得したのもつかの間、私はじりじりと、壁に追い詰められていた。


「え…錐生?」

「ねぇ、あいつ誰?…何してたの?」


ドンッと私の背中は、壁ぶつかった。そして、頭の真横には、細いくせにがっちりとした、錐生の腕がある。

――…逃げられない。



「しゅ、俊也は、本当にただの幼なじみなの!小学生の最後の日に、俊也がアメリカに行っちゃって、お互いに寂しかっただけ……」

「………俺には、そう見えないけど?」


そう言った錐生の顔は、益々険しくなっていて、私にどんどん近付いてくる。


「俺、独占欲、超強いの。だから、他の男が薫に触ったと思うと、めちゃくちゃムカツク。」


細くて長い指で、私の髪を掬うと、そっ…と口づけをした。


「俺、そこまで我慢強くねぇよ?」


私を見つめるその瞳は、とても艶っぽくて、息を呑む美しさ。妖しい眼差しに、思わず吸い込まれそうになる。

ちくん…と痛む胸とは裏腹に、この先を知りたいという私の欲望が、胸に渦巻く。

錐生に見つめられると、私はたやすく魔法に掛けられてしまう。


――このまま、錐生の思うままにされたい………。


そんな想いが胸を過ぎる。


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