ピンク☆ゴールド【短編】
急ぎ足で、錐生のクラス『二年四組』へと向かった。

ちょうど鳴った、授業終了のチャイム。各教室から、沢山の生徒達が廊下に出て来る。

私はその波を掻き分けて、四組の入口にたどり着いた。


「あのっ、錐生居る!?」


覗いた教室には、男子が五人、一つの机を囲んで会話していて、私の声に気が付き、全員顔をこちらに向けた。

そして、一人だけ椅子に座っていた男子が、不思議そうに首を傾げた。


「大悟さんなら、来てないよ?お嬢、一緒に居たんじゃないの?」


――『大悟さん』。錐生は二年男子から、こう呼ばれている。同い年で、錐生を名前で呼び捨てにする人殆どはいない…という程、錐生は憧れの存在らしい。



「そっか…ありがとう。」


私は他をあたろうと、身体の向きを廊下へと変えた。すると、ぼふっ…と顔に何かがぶつかり、私の視界は真っ暗になった。

驚いて顔を上げると、そこには、背の高い男の人が立っていた。


「………竹内会長?」


そこには何故か、いるはずのない、会長の姿があった。

三年生が、あんまり二年生のフロアをうろうろしてたら、怒られてしまうはずなんだけど…。


「お嬢……?あれ、何でここにいんの?クラス違うよね?」

「私は、ちょっと用事があって……。会長こそ、どうしてですか?」

「いや、錐生君にこれ、渡すように頼まれててね。」


右手に持っていた封筒を指差す。かなり厚みのある紙の束は、会長の腕の中で、ずっしりと重みが感じられた。


「そうなんですか…錐生は今、いませんよ?私も今、探してたところなんです。」

「あれ、そうなの?てっきり俺は、お嬢と錐生は何時も一緒って思ってたんだけど。」


ズキン…と心が痛む。

確かに、恋人宣言なんてする前は、私と錐生は殆ど一緒にいた気がする。

それなのに今は、錐生と、まともに話す事さえままならない。

これじゃあ、恋人になんかならない方が、よっぽどマシだよ……。

あんなに仲良くしてたのに…私達の間に、大きな歪みができたみたいで…

私達、もう戻れないの?

私……どうしたらいいの…?



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