ピンク☆ゴールド【短編】
色んな想いが、胸の中を渦巻いて、きゅっ…と手に力を込める。

そんな私を気にして、会長が私の頭にポンッと、優しく手をのせた。


「お嬢、大丈夫?」


ふわっ…と頭を撫でられ、私の瞳は、何時もより、一回り大きくなった。

今までで、私の頭を撫でてくれたのは…お父さんとお母さん、二人のお兄ちゃん、お祖母ちゃん達……

そして、錐生と俊也、会長。


どれもみんな違う感覚だった。

少し乱暴な手つきだったり、そっと優しく触れるだけだったり……。

でも、どれからも一つだけ、共通するモノがあった。

きっとそれぞれ、色んなカタチがあるんだろう。

だけど、そのカタチが違うモノであっても、私の心には、必ず同じく伝わってくるんだよ………。

昔は何だか解らなかった。でも、今なら解る。

その『愛情』に……。


家族という関係から向けられたその想いは、何の躊躇いも無く、ただ自然に受け入れていた。

でも……そうじゃない人達からのその“感情”は、気付く事が出来なかった。


…ううん、違う。

私は、ただ気付かないふりをしていたんだ。

目の前にある“想い”を、私はひたすら拒んできた。

きっと……受け入れる事を、恐れていたんだね。

人の気持ちは、曖昧で…脆く、儚いから……。

その気持ちに応えるのを、必然と避けていたんだ。

傷つきたくないと……。



でも、今はもう違うよ。

私、ようやく気が付いたんだ。


今まで私が、どれだけ、貴方を想っていたのか……

私に向けられる、あの優しい眼差しに、こんなにも、恋い焦がれていたのか……。

貴方の存在が、私の中でいつの間にか、一番大切なモノになっていたんだ。

今なら必ず言えるよ…。



「会長…。」

「何?」

「私……行かなきゃ。」


覚悟を決め、会長に告げる。きっと私…今、物凄く情けない顔してると思う。

でもいいんだ。

もう、この気持ちは、ちゃんと伝えなければならないんだ。


< 25 / 34 >

この作品をシェア

pagetop