ピンク☆ゴールド【短編】
何処からどう見ても、完全に呆然とした顔の錐生。
私は、錐生が、いきなり現れるなんて思っても見なかったから、しどろもどろしてしまう。
「今…授業中でしょ?お嬢はサボっちゃダメだよ……。」
目線を下へ落とす。長い髪が、錐生の顔を隠して、今どんな表情をしているのか解らない。
「あのね、錐生……。私、話があるの…。」
意を決して、ゆっくりと…はっきり呟いた。
今言わなきゃいけない気がしたんだ―。
徐々に、錐生の顔が上がってくる。見つめ合う視線が絡み合い、何とも言えない緊張が、胸を過ぎった。
もう、後には戻れない――…。
「何……?」
錐生は無表情になり、私に問い掛けてくる。
すぅ…と息を整え、きゅっ…と掌を握り、私は少しずつ話し始めた。
「私…あれからずっと……考えてたの…。」
「あれから?」
「そう…。あの日……理事長から、恋人宣言を頼まれた時から……。どうして、錐生は…私は…断らなかったのか。いくら理事長の頼みだからって、私達に断る権利はあったはずだよね。なのに……どうしてって、ずっと…ずっと考えてた。」
結ばれた契約。本人の意思で、いくらでも、取り消す事は出来たんだ。
でも……それを私達は、望まなかった。……受け入れたんだ。
「きっと、錐生は優しいから。頼まれて、断れなかったんじゃないかって思ってた。……その上、私に対する態度も、全然変わらないし…。私、本当に嬉しかった。」
今までの思い出を引っ張り出す。
向けられた笑顔は、どんなに表情が違くても、必ず私の心に、焼き付いていたんだよ。
「どんな時でも傍に居てくれて、必ず私に微笑んでくれる。その事が、私……何より幸せだったんだ。」
胸に溢れる想いが、込み上げてくる。
潤み始めた瞳は逸れる事なく、ただひたすら錐生だけを見つめていた。
私は、錐生が、いきなり現れるなんて思っても見なかったから、しどろもどろしてしまう。
「今…授業中でしょ?お嬢はサボっちゃダメだよ……。」
目線を下へ落とす。長い髪が、錐生の顔を隠して、今どんな表情をしているのか解らない。
「あのね、錐生……。私、話があるの…。」
意を決して、ゆっくりと…はっきり呟いた。
今言わなきゃいけない気がしたんだ―。
徐々に、錐生の顔が上がってくる。見つめ合う視線が絡み合い、何とも言えない緊張が、胸を過ぎった。
もう、後には戻れない――…。
「何……?」
錐生は無表情になり、私に問い掛けてくる。
すぅ…と息を整え、きゅっ…と掌を握り、私は少しずつ話し始めた。
「私…あれからずっと……考えてたの…。」
「あれから?」
「そう…。あの日……理事長から、恋人宣言を頼まれた時から……。どうして、錐生は…私は…断らなかったのか。いくら理事長の頼みだからって、私達に断る権利はあったはずだよね。なのに……どうしてって、ずっと…ずっと考えてた。」
結ばれた契約。本人の意思で、いくらでも、取り消す事は出来たんだ。
でも……それを私達は、望まなかった。……受け入れたんだ。
「きっと、錐生は優しいから。頼まれて、断れなかったんじゃないかって思ってた。……その上、私に対する態度も、全然変わらないし…。私、本当に嬉しかった。」
今までの思い出を引っ張り出す。
向けられた笑顔は、どんなに表情が違くても、必ず私の心に、焼き付いていたんだよ。
「どんな時でも傍に居てくれて、必ず私に微笑んでくれる。その事が、私……何より幸せだったんだ。」
胸に溢れる想いが、込み上げてくる。
潤み始めた瞳は逸れる事なく、ただひたすら錐生だけを見つめていた。