ピンク☆ゴールド【短編】
カノコウから駅まで、約15分程度。そこまでは歩いて移動する。

「ねぇ、お嬢は今まで誰かと、付き合ったことある?」

「私?ないよ。」


別にモテるんだけど、私の中には『付き合う』っていう考えがないらしい。


「なんで?お嬢可愛いのに、勿体ないでしょ。」

「勿体ないの?なんかよく分からない。私の脳細胞に『恋愛』って要素、ないみたい。」

「へぇ…だったら尚更だな。」


ボソッと、錐生が何か呟いた。


「え?どういう意味?」

「いや、何でもないよ。てか…もう着くよ。」



目の前にはオシャレな駅ビル。学校帰りの学生達が、沢山行き交っている。


「まず何処行こうか?」

「錐生に任せるよ。」

「んんー…じゃあ、そこ。」


そういって錐生が指差したのは、いかにも女の子らしい洋服が揃った、可愛いお店。


「わぁ…可愛い…」

「お嬢に似合いそうだからさ。」

「私ぃ!?無いでしょ!」

「まぁ確かに、お嬢はエロ系の方がピンとくるね。」


じっと上から下へと私の身体を見渡す。


「なっ、何よ…?」

「いーや、相変わらずいい身体してるね?」

「…バッカじゃないの?」

「ははっ、まぁそう怒らないのー。」


何でこんなに調子がいいんだろう。絶対おちょくってる…。



お店のディスプレイには、花柄のシフォンワンピースやカプリパンツを身にまとったモデルのポスターが飾られている。

皆、こちらに向けて、満面の笑みを浮かべている。


「…可愛いなぁ。」

「なにが?」

「だからモデルよ。ちゃんと服着こなして…綺麗じゃない?」

「そう?俺は、お嬢もモデルできると思うけど…。」

「なっ、何言ってんのよ…。私、そんなに笑えないし。」

「そうでもないよ……?お嬢の笑顔は、誰よりも可愛い。」



……何?この気持ち―。

そこまで私をからかわないでよ…。

錐生は、何考えてんの?



私の心を弄ぶような事しないで………。





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