ピンク☆ゴールド【短編】
瞳を逸らさず、しっかりと錐生を見つめる。

きっと今、私の顔は、自分でも驚く程真っ赤なんだろうけど、そんな事を気にしている余裕なんて、少しもない。


「誰かに決められた恋人じゃなくて……ちゃんと、相手が選んでくれた恋人になりたいの…。」


段々と弱々しくなっていく語尾。

空回りしたみたいで、物凄くカッコ悪い…。


きゅっ…と目をつぶり俯いた。

でも、それはすぐに、錐生によって阻止された。

優しく頬に手を添えられ、くいっと顔を上げられた。

目の前には、錐生の顔。

見取れてしまう程、綺麗な瞳が、私を捕らえて離さない。

幾ら恥ずかしくても、まるで魔法が掛けられたかのように、逸らす事が出来ないんだ…。


「そんなの……断るはず、ないでしょ?」


クスッと微笑した後、優しく微笑む。目尻が少しだけ下がって、私はとても暖かい気分になった。


「俺は、薫じゃないと嫌なんだよ。だから、薫がいいって言ってくれるなら、それだけで十分だよ…。」


すると、錐生は、いきなり私をギュッと抱きしめた。


「ちょっ…苦し…。」

「はぁ〜、やっと俺のモノになった♪マジ幸せ…。」


チュッと頭上にキスが落とされる。静かな屋上に、音が響く。


「ん〜物足りない…。ねぇ、薫。キスしていい?唇に♪」

「なぁっ……!」

「いいじゃん……ダメ?」

「うっ…い、ぃいよ…。」


腰に廻っていた手が、私の顎を器用に持ち上げて、二人は見つめ合った。


「好きだよ……薫…。」


……そっと、唇が触れ合う。

柔らかい感触が、身体中に熱を送って、この上ない幸せが込み上げてくる。


……ありがとう。

こんな幸せを私に与えてくれて…。

貴方に包まれているだけで、私はこんなにも満たされていくんだよ。


これからも……私の傍で笑って居て下さい…。



好きだよ、大悟…。



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