ピンク☆ゴールド【短編】
…私、最近どうしちゃったんだろう。

錐生の言う事をどうしても真に受けちゃう。


―信じたくない…。


絶対…おちょくってるんだよね?

私の事…からかってるんだよね?


なのに、どうして錐生は何時も『真剣だ』って言うの?


私…勘違いなんてしたくないよ―――。





「―――…お…嬢?」

「へっ!?」

「意識飛んでたみたいだけど……大丈夫?」

「嗚呼…平気だよ。」

「そっか、ならいいんだ。今から服、決めるからー。」



ずんずんと、お店に向かって歩く錐生。その後を着いて行く。

店内をぐるっと見渡したかと思うと、素早い動きで何着かの服を手に取ると、私に押し付けた。

「これ、着てみて?」

「えっ、あ…うん。」


試着ブースに入り、渡された服を見る。デザインの違うワンピースが三着。


一つは、大まかなフリルが幾つも重なって、段になっているキャミワンピ。


もう一つは、花柄のシフォンワンピース。首周りには細かなレース、春らしく五分袖だ。


そして三つ目は、チェック柄のワンピース。上半身の部分は、身体にピタッと張り付くようなデザインになっていて、スカートの部分は、動く度にふわっと揺れるようなフェミニンな感じになっている。
これだけは、ワンピースに合わせて、白のジャケットがセットだった。



言われた通り、一着ずつ試着してみる。それぞれの服の様子を、真剣に眺める錐生。


「……じゃあ…これで。」

「かしこまりました。」





――…。


錐生の選んだ服は、三番目に着たモノだった。

実際あのワンピースが、私に似合っているのかは、よく解らない。

ただ、錐生がかなり真面目に選んでくれたので、あたしはお言葉に甘えて、その服を買う事にした。



――はずだった。





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