ピンク☆ゴールド【短編】
「ちょっ…いいって!」

「何で?俺が選んだんだもん、当然でしょ。」

「そんなんじゃ、錐生に悪い!」


レジの前には、ブラックカード――。私のモノではない。

錐生が、ワンピース代を払うと言うのだ。







結局、錐生が買ったワンピース。私が油断した間に、さっさと会計を済ましてしまった。

そして今は、駅ビル内のカフェに居る。


「ワンピースありがとう。私も何か、お礼するから。」


脚を組んで、ゴクッと苦めの珈琲を飲みながら、錐生は少し微笑んだ。


「別にお礼なんていらないよ?今日の事は、俺の単なる気まぐれのようなモンだし。」

「そういう訳にはいかないじゃない……。」


すると、錐生は少し考え込んでから、ニッコリと笑顔でこう返した。


「じゃあ、今日買ってあげた洋服着て、週末俺とデートしてくんない?」



デ……デート?



「ま、まぁいいけど……。」


どういう風の吹き回し?

付き合ってもないのに、デートって如何なるモンよ?

実際、デートなんて、本格的にしたことないし…。


色々と考え込む。でも、錐生の指が眉間に伸びて来て、思考はストップされた。


「眉間に皺、寄ってるよ?」


ククッと笑うと、私の頭をそっと撫でた。


「大丈夫だよ。お嬢は、何時も通りにしててくれれば。」


くしゃっ…と髪を乱す。


「ちょっ…とぉ、何すんのよっ!」

「ははっ、ほんっとにお嬢は可愛いなぁ♪」

「もうっ、遊ばないでよ!」



たわいもなくじゃれ合う。

私達って…周りから見ると、どんな関係に見えるのかな?

兄妹?友達同士?…恋人同士?


そんな事は、どうだっていい。


私はただ、錐生とこうして何時までも、普通に過ごせて行ければいいと思っていたんだ…。




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