ピンク☆ゴールド【短編】
次の日―。


今日は、カノコウ伝統の、新入生を迎える式典があるため、学校は何時もより騒がしかった。

私は、理事長の孫娘として、式典には欠かせない存在となるらしく、人一倍慌ただしかった。


とは言っても、スピーチの原稿なんかは、とうの昔に出来上がっている訳で、私はただそれを読み上げる…なんて言った仕事が多々あるだけだ。



「お嬢、手引ここに置いておくよ。」

今は生徒会室で、三年生の竹内奏多(タケウチ カナタ)会長と、式典の打ち合わせをしている。


「嗚呼、ありがとう。」

「あと…さっき理事長が呼んでたよ?」

「えっ!?お祖母ちゃんが?解りました!」

「うん、こっちは俺に任せてよ。」

「お願いします、会長。」



そう言って、理事長室に向かう。こんな忙しい時に、お祖母ちゃん…何の用だろう?


理事長室に着くと、そこには理事長と、錐生の姿があった。



「薫、遅かったわね。」


お祖母ちゃんは、私のお父さんのお母さんなんだけど、まだ60歳。全然若いんだ。


「ごめんね、お祖母ちゃん。で、用事って?」

「その事なんだけど、今日の式典で、錐生君と一緒に舞台に上がってくれないかしら?」


「一緒にって……何するの?」


「あのね、恋人宣言してくれない?」





…………はいぃぃぃ!?



「なっ、何で!?」

「だって…二人、仲良いじゃない?それに、これは薫の為なの。」

「私の為?」



私の為と恋人宣言、何の繋がりがあるって言うの?


「これはね、東院家全員で決めた事なの。薫の彼氏は、やっぱりちゃんとした人がいいのよ。だから、錐生君なら信頼できるし、薫も文句ないと思ったの。錐生君の承諾は得てるし………どう?薫。」


どうって言われても……解らないよ。

大体、恋人だなんて、いきなりだ。


しかも、どうして錐生はOK出したの?



……理事長の頼みだもんね。

そうだよ。きっと断れなかったんだ。



心がもやもやする。



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