親愛なるシャボン玉
心が弾む。
着ていく服を選びながら、歌まで歌いたくなる。
曲は、“おおシャンゼリゼ”だ。今にもスキップしたくなる。
窓から吹き込む風が、桜の花びらを運んできた。
それを親指と人差し指でつまみ上げると、なんだかもったいなくて、机の上にあった本の間に忍ばせた。

庭で花に水やりをしていた母親は、羽瑠の歌声に気付いて、二階を見上げながら「ずいぶんご機嫌だこと」
と呟く。

リビングのソファで新聞を読んでいる父親は
「まったく誰に似たんだか」
と呆れ顔で溜め息をつく。

柴犬のポロは縁側でアクビした。
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