親愛なるシャボン玉
ハル
春の放課後。
窓際の席に座って校庭に目を向けた。
野球部、ソフトボール部、陸上部の練習風景が目に入る。
そして…満開の桜。
「もぅ、1年かぁ」つぶやいた一人言が、夕陽の差し込んだ教室に静かに響く。「なーにがっ?」
不意に響いた、自分のものではない声に驚いて、教室の入り口に顔を向ける。
声の主が誰かを知ってため息をついた。「部活サボってなにしてんの?!」
少し怒ったような表情で、羽瑠(ハル)の前の席に、校庭を向く格好で座る。
「別に」
出来るだけ素っ気なく答えた。
羽瑠の苦手なタイプの女だ。
「さては好きな男の子でも眺めてたな」その言葉を無視してカバンをつかみ、立ち上がった。教室を出ようとする羽瑠の背中に、さっきとはまるで別人の様な声が投げかけられた。「柴田さん!」
その力強い声に、思わず足が止まってしまう。
「…あの話、もう一度考えてみてくれないかな?」
「…………」
走って学校の階段を降り、校門を飛び出した。
全速力で学校の坂を駆け下りた。
何も考えなくてすむように。
何も思い出さないですむように。
夕陽を浴びた桜が眩しかった。
眩しくて、切なかった。
窓際の席に座って校庭に目を向けた。
野球部、ソフトボール部、陸上部の練習風景が目に入る。
そして…満開の桜。
「もぅ、1年かぁ」つぶやいた一人言が、夕陽の差し込んだ教室に静かに響く。「なーにがっ?」
不意に響いた、自分のものではない声に驚いて、教室の入り口に顔を向ける。
声の主が誰かを知ってため息をついた。「部活サボってなにしてんの?!」
少し怒ったような表情で、羽瑠(ハル)の前の席に、校庭を向く格好で座る。
「別に」
出来るだけ素っ気なく答えた。
羽瑠の苦手なタイプの女だ。
「さては好きな男の子でも眺めてたな」その言葉を無視してカバンをつかみ、立ち上がった。教室を出ようとする羽瑠の背中に、さっきとはまるで別人の様な声が投げかけられた。「柴田さん!」
その力強い声に、思わず足が止まってしまう。
「…あの話、もう一度考えてみてくれないかな?」
「…………」
走って学校の階段を降り、校門を飛び出した。
全速力で学校の坂を駆け下りた。
何も考えなくてすむように。
何も思い出さないですむように。
夕陽を浴びた桜が眩しかった。
眩しくて、切なかった。