狼系王子とナイショの社内恋愛


「結城さん、先輩の事ちょっと気になるんじゃないですか?
ずっと先輩の事見てたし」
「……そんなわけないでしょ」

変な噂話よりマズイ話題に、目を逸らしながら言う。
この子本当に人の事よく見てて怖い。

「そんな事ありますよ。ね、先輩って今彼氏いるんですか?」
「いないけど」
「ならちょっと狙ってみたらどうですか? 結城さん。
上手くいくと思うんですけど」
「だから、そんなわけない……」
「あ、結城さん、こっち来ますよ!」

金子さんの声に食堂の方を見ると、確かに結城さんがこちらに向かって歩いてくるところで。
もっとゆっくり食べればいいのにと心底思う。
これじゃ急いで食堂から逃げ出した意味がないじゃない。

「企画課戻るんですか? 四階押せばいいですか?」

金子さんが聞くと、エレベーターホールまで来た結城さんがお願いしますと微笑む。
なんとなくぼんやりとその様子を見ていると、結城さんがこっちを見るから慌ててぐるっと頭を回した。

なんで思いっきり目を逸らすんですか、とでも言いたそうに結城さんが見ているのはなんとなく分かったけれど、気付かないふりをする。









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