狼系王子とナイショの社内恋愛
なんで今日に限って乗っちゃったんだろう……。
っていうかもう、止めたのって金子さんなんじゃ……。
どうしよう、もうあの子本当に怖い。
「エレベーター、苦手なんですか?」
「……本当に少しだけですけど。
子どもの頃一度閉じ込められた事があって、それから閉鎖感のある場所全部が嫌いなんです」
はぁと軽くため息をつきながら言うと、結城さんは少し黙った後、床に腰を下ろした。
そして、私もそうするように言う。
「座ってた方が落ち着きますよ」
「……そうですね」
「あ、でも高橋さんは直に座らない方がいいですよ」
はい、と結城さんが広げてくれたのは、結城さんのハンカチだった。
そんなの悪いし、別に直に座って困るような高いスカートじゃないからと言った私に、結城さんはいいですからと少し強引にハンカチを敷いた。
「え、そこですか?」
「何か問題でも?」
「……問題しかないですけど」