狼系王子とナイショの社内恋愛
結城さんがハンカチを敷いたのは、結城さんの両足の間だ。
そんなバカップルみたいな事できるわけないじゃないですか、と言うと、結城さんはここなら少しは高橋さんが安心できると思ったのに、と笑う。
「後ろから抱き締められると安心するとか言うじゃないですか」
そんなの、恋人相手とかでしかも結構付き合いが長い場合に限られる気がする。
落ち着いた好きって感情にならない限りは、後ろからでも前からでも、くっつかれたら安心するどころかドキドキしちゃいそうだ。
少なくとも今の私には、結城さん相手にそんな事したら心臓が爆発する。
「できたら隣に座ってもいいですか」
どうぞ、と微笑んだ結城さんが、自分の隣にハンカチを敷く。
なんかそこに座るのは恐れ多い気がしたけど、せっかくの親切だから素直に受け取る事にした。
女性社員の憧れの的である結城さんのハンカチを踏んづけるなんて、後で罰があたるかもしれない。
洗って返すどころじゃなく、買って返すべきだろうか。
そんな事を考えながらオレンジ色の明かりをなんとなく見上げていると、しばらくした後結城さんがこっちを向いた。