狼系王子とナイショの社内恋愛


「佐々山課長、今のは結城さんの冗談ですよ。
真に受けないでください」
「ああ……そうか。悪い」
「それと、部下にプライベートな付き合いを聞くのはセクハラです」

目を合わせずにそう言った後チラっと見上げると、優輝は一瞬真顔になって。
そして傷ついたように微笑んで、悪いと言った。

その顔を見ていられなくなって、ぐっと顎を引いてテーブルの上のコーヒーを見つめた。

なんで、そっちがそんな顔するの?
なんで傷ついた顔するの?

傷ついたのは……振られたのは私の方なのに。
別れたいって言ったのは、優輝の方じゃない。

「私帰りますから佐々山課長ここどうぞ」

早口にそれだけ言って、鞄を持って席を立つ。

優輝が顔に出やすいのは知ってる。
仕事で顔合わせなくちゃだし、それだけでもかなり気を使ってるから、休日までそんな気遣いさせても可哀想だ。



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